太陽と大地の恵み

岡村 康平さん (ありがとんぼ農園 農家)

【プロフィール】

昭和53年(1978)生まれ。大学を卒業後、たくさんの師匠のもとで経験を積み、太陽と大地の恵みをいかした無農薬・無肥料の「できちゃった農法」の農業のスタイルにたどり着く。自然のサイクルの中で、水が山から田んぼへ、そして海へかえるため、「米を育てるには豊かな山をつくらないといけない」と山の整備にも取り組む。最近では、彼を慕って数人の新規就農者が都市部から移住してきている。ひとつの田んぼに38種類の米をまく「イロイロ米」や、ほうすけらっぱ(どぶろく)などが人気商品。

【ありがとんぼ農園の名前】

田んぼで働いていて「とんぼ」が身体にとまることがあり、なかなか離れない。そんな、とんぼが今の農業をしてから田んぼに増えた気がする。「とんぼがありがとう」と言っている気がした。

【仕事をするきっかけ】

愛媛大学農学部を卒業後、朝来市の朝日(糸井地域)にある「あーす農場」に、中学生時代の同級生の家族に会いに行った。するとちょうど山からたくさんの炭を担いで、炭焼きで顔を真っ黒にした同級生がおりてきたところに出会う。その姿をみて「なんか負けたな」と思った。自給自足の生活をする「あーす農場」は今の原点で、鳥の飼い方やしめ方、手植えでの米の育て方など多くのことを学ばせてもらった。現在までに全国と地元の師匠から学び、太陽と大地の力に任せる農の姿に行き着いた。また、「農的暮らし」から「農業」として本格的に取り組んでいくには結婚というきっかけがあった。

【仕事の楽しさ】

全国と地元の師匠から見聞きすることは目から鱗の話がたくさんあって、「腹にすわる」感覚があった。自然の流れがあり、自然の中に自分が入り、「生きていくのに必要なことをしている」だけ。「農業は仕事じゃない」。農業をするなかで自分のわからないことがたくさんあって、好奇心がどんどん湧いてくる。それを埋めていく日々が続き、「これでいいんだな」という瞬間がある。

また、大豆の収穫中にはじけた大豆が偶然口の中に入ったとか、みそのパック詰めでちょうど何百ある輪ゴムがピッタリなくなったとか、些細なことに楽しさを感じる。

そして、京阪神への出店。
農業をしていてできた作物や加工品を囲んでお客さんと話をすることができる。また若い女性に会う機会も少ないので、「落として上げるトーク」を頑張る。くらいかな。

【うれしかったエピソード】

農業をやっていて20代は悩みの連続だった。今でも毎年農業をやめようと思うが、秋の収穫の時期になると、自然と来年はどうしようかと考えている。豊作か不作か、農業はギャンブル。梅雨を過ぎて実った作物をみてほっとする瞬間がいつもうれしい。

【今後の展望】

里山整備に取り組んでいきたい。里山整備はわからないことだらけ。そして、ストレス解消にもなる。だから楽しい。

【朝来市のオススメ】

最近初めて参加した三波区(竹田地域)の盆踊り。地域で共同作業で取り組み、みんなで輪になって踊りたい人は踊り、お酒を飲みたい人は仲間と酔う。これは良かった。

【感想】

日々生活をするためだけの農業ではなく、自然の中で暮らす一員として、人の手が入ったほうが良い部分を岡村さんが行い、あとは自然が作物を育ててくれる。そして、その恵みを頂く。そのサイクルのひとつとして「自分は空気みたいになりたい」と言います。話を聞く中でとても印象的な言葉が次々に飛び出しますが、失敗の連続から学んだ理論があり、「家族が一番大事。農業は一番最後。」と地に足着いた考えが土台にあります。その生き方や言葉に共感した、同世代が新規就農者として都市部から移住し、朝来市に新しい風がどんどん入ってきています。新たなメンバーも含め、これからの活躍が本当に楽しみです!